第8章 捌ノ型. 悪意には悪意を
あまりの統率の取れ方にまるでお館様のようだと誰もが思う。
お館様がひなき達に支えられ部屋に到着したのを見計らったかのように、朱嘉は視線をこちらへと戻した。
「さてと、ここからは上同士の話だな....」
そう言って朱嘉は懐から取り出した煙管をふかし始める。
流れるような動作に反して、真っ赤な瞳がギラりと光りこちらを睨みつけていた。
「今夜の鬼狩りは俺達の部下が請け負おう。そちらは集められるだけ隊士を集めろ。勿論階級問わずな。」
言った朱嘉に不死川がくってかかる。
「てめぇ、お館様になんて口をききやがる!!」
「止めないか実弥...」
今にも殴らんとする不死川を止めたのは誰でもない、お館様自身だった。
「しかし!」
尚も納得のいかない実弥に向けて朱嘉は煙を吐く。
顔には出ていないが、滲み出る殺気から心中穏やかでない事は確かだろう。
苛立たしげに刀に付いた血を払い鞘へと戻す。
「勘違いするなよ人間。これはお願いじゃない、命令だ。」
ビリビリと純粋な怒気を肌に感じ、不死川は黙ってしまう。
それ程の圧。
「分かった。少し時間をくれないか。」
それに反して、冷静に対処するお館様にその場が救われたと言っても過言ではない。
言うやいなやお館様は各地の隊士へ向け鎹鴉を放ち、収集をかける。
そこから本部へと隊士が集まるのに半日とかからなかった。
文明の力である列車を惜しげも無く活用した産屋敷の手腕と言えよう。