第6章 陸ノ型. 理解する事 ~時透無一郎・悲鳴嶼行冥の場合~
「はは、これは凄いな。」
そう言って終始にこやかな悲鳴嶼の手元には、先程刹那が渡した煉獄からの手紙が握られている。
悲鳴嶼の自室だという部屋に通され、当初の目的を果たさねばと刹那が煉獄からの手紙を渡してからずっとこの調子だ。
一体何が書かれているのか
盲目な悲鳴嶼の代わりに手紙の内容を耳打ちする隠の表情もにこやかで、余計に気になってしまう。
「君は随分と信頼されているようだ。」
役目を終えた手紙を傍に置きながら言う悲鳴嶼に刹那は首を傾げた。
刹那の隣に座り茶菓子を頬張っていた時透も例外ではない。
「この手紙は最初から最後まで君の良い所ばかりが書いてある。君に良くしてやってくれと締めくくられてな。」
てっきり任務についての手紙かと思っていた刹那は、その言葉に面食らってしまう。
屋敷を出る前煉獄言っていた。
この手紙はとても大切な事が書いてある、と。
その大切な事がまさか自分に関する事だと誰が想像できただろうか。
煉獄が自分に良くしてくれているのは知っていた。
しかし一体何を書いたのかと、恥ずかしさと嬉しさとで逆にいたたまれなくなってしまう。
俯く刹那に悲鳴嶼は続ける。
「正直私は君が鬼殺隊に入ることを反対していた。鬼であると言うこともそうだが、君の事をあまりにも知らなかったからだ。子供というのは自分がよく見られたい者が居なくなると本性が出る生き物。しかし....」
一呼吸置いて、
「君は何か違うのかもしれない。私や時透が居ないあの空間で、尚変わらず真っ直ぐに正しい事をした。私はその時からもう君を認めたいと思っている。」
優しく微笑む悲鳴嶼の言葉に嘘はないだろう。
疑わしき事は何も無い。
そう言われているかのように雰囲気が柔らかい物に変わったから。