第1章 壱ノ型. 出会う
その勢いのまま立ち上がったかと思えばギリギリと拳を握りしめ、少女の元に歩み寄る。
「おい鬼、お前何が目的だ?1人で俺達を殺しにきたのか?それとも、合図でも出して仲間を呼び込むのか?」
少女の髪を掴み無理矢理顔を上に向ける様はお世辞にも柱とは思えない。
他の男集団は興味なさげにお館様の方を向いているし、
女集団は呆れて物も言えないという空気だ。
「答えろ鬼!!どうせ鬼舞辻の回し者だろうが!!」
【鬼舞辻】という名前を聞いた瞬間一瞬だけ少女の顔が曇った。
『私を鬼舞辻の作りだしたまがい物と一緒にしないでくださいまし。人を喰わねば強くなれぬあのような下卑た物と一緒など、心外でございます。』
不死川の気迫に一切怯むことなく、淡々と答える少女に不死川はさらに熱くなる。
「上等だ、何を言おうが所詮お前は鬼。今すぐここで殺してやるよ。」
不死川が抜刀し、少女の首を捉え刃がくい込むその瞬間
「実弥、私はその子と話がしたいんだ。」
静かだが芯のあるお館様の声が不死川の刀をすんでのところで静止させた。
「しかしお館様!こいつは!」
「実弥...二度は言わないよ?」
妙な威圧感。
否定などさせないというこの声に不死川は弱い。
「っ....出過ぎた真似を、失礼しました....」
不死川が大人しく元の場所に座ったのを感じ取ってからお館様は少女の方へ向き直る。
「すまなかったね、話を戻そう。杏寿郎、その子は何故私に会いたがっていたのかな?」
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