第6章 陸ノ型. 理解する事 ~時透無一郎・悲鳴嶼行冥の場合~
『痴れ者めが....』
呟いて刹那が手を離すとそのまま隊士は崩れ落ち、残る意識だけで刹那を睨むが、
「あ、ああ...」
直ぐにその目には怯えの色が滲む。
冷たい目が隊士を睨み、汚物でもあるかのように口元を袖で隠す刹那に
初めて隊士は自分がどれだけ危険な状況なのか悟った。
刹那の目は語っている。
自分を殺す事など造作もないのだと。
『お前のような痴れ者には一生理解出来まい。時透様の力は、才能だけだと思うてか?分からないでしょう、可哀想に、理解されない時透様も不憫だわ。』
「な、何を言って」
『潰れて硬くなったマメにより掌は腫れ、刀の持ち手に血はにじみ、一朝一夕では作り込めるわけが無いあの体。天才という言葉などただの後付けに過ぎぬ。彼は努力をしたから強いのよ。』
「知るか!俺は充分強いんだ!あいつより!絶対に!」
刹那の言葉の意味を読み取れない隊士は、尚も吠える。
その姿があまりにも滑稽で
刹那は更に言葉を続ける。
『本当におめでたい頭をしておられる。お前は何のために鬼殺隊にいるの。何のためにここに稽古をしに来たの。酷く不快だわ。』
何か言い返さねば。
そう思ってはいるのに、年下の柱に一太刀もいれられず、
その上急に現れた刹那にも負け
言い返す言葉すらもう底つきてしまった。
(誰か助けてくれ)
「そこまでだ、」
隊士の祈りが届いたのか否か、突然襖が開き大柄な男が入ってくる。
岩柱、悲鳴嶼行冥だ。