第6章 陸ノ型. 理解する事 ~時透無一郎・悲鳴嶼行冥の場合~
『それは、どういう意味でございましょうか?』
静かに聞く刹那に何を勘違いしたのか、隊士は嬉嬉として続ける。
「どういう意味って分かるだろ?あの歳で柱なんて裏があるに決まってんだよ。大方、上の奴らに体でも売ったんじゃねえか?最近は男色家も山ほどいるしな!!」
下卑た言動に刹那の体から血の気が引く。
(裏がある?体を売った?)
『お前は何も分かっていないのですね』
刹那の声と共にその場の空気が一気に低下する。
ゆっくりと立ち上がる刹那の異変を、さすがに隊士も感じ取ったのか顔が強ばった。
『身の程もわきまえずに、よくもまあそんな言葉を吐けるもの』
「う、うるせえ!何様だ女如きが!!!」
ジリジリ刹那が距離を詰めるのと、そばに転がる木刀を手に取り隊士が振りかぶるのはほぼ同時だった。
しかし、
『遅すぎる』
目にも止まらぬ速さで刹那は隊士の首を捉えた。
細い刹那の指が隊士の首を的確に締め上げる。
力の差など歴然。
そのまま力を込める刹那。
ぎちぎちと首を絞める音と、隊士の嗚咽だけが部屋にこだまする。