第6章 陸ノ型. 理解する事 ~時透無一郎・悲鳴嶼行冥の場合~
そんな二人を見て小さく舌打ちをしたのは、半分忘れ去られた一般隊士だった。
「いいよなあ柱様は。稽古中でも女囲ってんのかあ?」
その言葉に刹那の眉がピクリと動く。
「こっちは必死だってのによ、そんなんじゃ真面目にやろうとも思わねえっての!」
そう続けて高笑いする隊士。
『貴方ちょっと...』
「いいよ、いつもの事だから。」
『時透様...』
そう言い、立ち上がりかけた刹那を時透が止めた。
悪態をつく隊士を見ることも無く、立ち上がり
そのままお腹空いたから何かとってくると言って、出ていってしまう。
残されたのは隊士と刹那。
2人になった途端、隊士は刹那をニヤニヤと嫌な笑みで見てくる。
(気持ちが悪い。)
この1時間程この隊士を見ていた刹那だったが、どうもこの隊士とは関わりあいになりたくない。
というのも、
どこかで見たことがある顔だと思っていたのだが、
先日煉獄と赴いた任務で、赤子のように泣きわめき
あろう事か他の隊士を盾にして鬼から逃げていた隊士だった。
あの時も心底軽蔑したものだが、
今日ここに来て稽古への姿勢を見てから、尚のこと軽蔑してしまった。
教えてもらう側がこうでは柱側も真剣には取り組まないだろう。
実際、岩柱と霞柱に依頼して霞柱しかこの場にいない事が何よりの証拠ではないか。
自家の地位に溺れ、自分の力を見誤る。
そのくせ周りには高圧的で、何よりも自分が正しいと思っている。
刹那はこういう輩が1番嫌いだった。
だから極力穏やかに、この場をやり過ごすつもりだったのに
「あんな糞ガキが柱じゃ、鬼殺隊も終わったなあ」
どうやら刹那の気遣いは無駄に終わってしまうらしい。