第6章 陸ノ型. 理解する事 ~時透無一郎・悲鳴嶼行冥の場合~
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「はあ、もう良いよ。一旦休憩して。このまま続けても無駄。」
諦めたように時透が言い放ったのは、それから1時間と経たないうちだった。
隊士に背を向けた時透はそのまま刹那の隣に座る。
『時透様、見事な剣さばきでした。まるで揺蕩う霧のよう。』
「いいよそういうのは、それよりあんた何しに来たの」
素直に技術を賞賛した刹那への第一声がこれである。
(難しい年頃だこと....)
まだ幼さの残る顔立ちからは想像できない位の力強い太刀筋は、時透の努力を物語っている。
静かなようで、何かに怒っているような焦っているようなそんな気配を刹那は柱合会議の時から感じていた。
少しだけ見える掌には、固くなったタコの影。
『時透様は天才だと聞いておりましたが、どうやら努力の天才と言った方がいいのかもしれませんね。』
「なんなの急に、僕の質問に答える気あるの?」
優しく笑う刹那と対照的に時透は終始無表情でこちらを見る。
そのまま何度か同じ内容の押し問答が続き、
「はあ、ちゃんと自己紹介してなかったね。時透無一郎。よろしく。」
先に根負けしたのは時透だった。
ぶっきらぼうに差し出された手を、刹那は優しく両手で包む。
『ふふ、よろしくお願いいたします。』