第6章 陸ノ型. 理解する事 ~時透無一郎・悲鳴嶼行冥の場合~
「踏み込み甘すぎ、ふざけてるの?」
煉獄に頼まれ、岩柱邸に赴いた刹那が初めて聞いた声はそれだった。
声が聞こえた方迎えば、何故かそこには岩柱では無く霞柱である時透無一郎が居て、
彼の傍に倒れ込むようにして呻き声をあげるのはどう見ても一般隊士だ。
「ああ、今日はこれの日でしたか」
刹那を邸の中へ招き入れてくれた隠が言うには、時透にのされている一般隊士は代々鬼殺隊の家系でかなり位の高い一族の出らしかった。
入隊してかなり経つものの技術が上がらない事を心配した両親が岩柱と霞柱に頼み込み、異例の稽古が始まったらしいのだが、
「くそ!何なんだよ!俺より年下のくせに!!」
見ての通り態度が悪く、真面目に鍛錬する気配もないので毎日霞柱になじられているらしい。
「霞柱様、お忙しいところすみませんが岩柱様をお呼びしますので、しばらくの間彼女を見ていていただけますか?」
この雰囲気の中えらく胆の座った隠は、淡々と時透に尋ねる。
ちらりとこちらを見た時透だったが直ぐに視線を隊士へと戻し、
「好きにすれば」
それだけ言って稽古を再開する。
出来ることなら私も一緒に岩柱様の所へ向かいたい。
そう思う刹那だったが、喉元まで上がってきた言葉をぐっと堪えて
部屋の隅へと腰を下ろした。