第4章 肆ノ型. 共同護衛 ~不死川実弥・伊黒小芭内の場合~
同日別配置 煉獄不死川班
「チッ...」
「不死川!先程から舌打ちが凄いぞ!どうにかならないのか?」
終始刹那に殺気を飛ばす不死川のお陰か、こちらもこちらで雰囲気は最悪だ。
困った様に眉を下げる煉獄を見ることも無く、不死川はただ一点を見つめる。
刹那と伊黒が待機している岩陰だ。
任務に就き二手に別れてからずっとあちらの気配を探っていた不死川は、誰よりも早く伊黒の変化に気付いた。
最初は自分と同じように嫌悪や殺気の入り交じった気配だったのに、何があったのかそれが徐々に薄れ今では穏やかな気配しかしないのだ。
柱合会議の時も今日の任務の事をお館様に聞かされた時も、伊黒の刹那に対する不信感は確かだった筈。
この短時間で何があったのか、考えても出ない答えに不死川の苛立ちはピークに達する。
「絆されやがって...」
そう呟いて不死川は煉獄を見た。
「お前もお前だぞ煉獄」
「む?何がだ?」
煉獄は不死川の発言に首を傾げる。
その様子にまた不死川の青筋が増えた。
「あの女鬼だよ!!昨日の任務で何があったか知らねえがなァ、ちょっと信じるのが早すぎるんじゃねえか?!」
不死川の鬼迫に一瞬驚いた煉獄だったが、次の瞬間にはハッハッハと大口を開けて笑う。
「何笑ってやがんだァ?」
「いや、不死川の言う事も一理あると思ってな!確かに過ごした時間はたった一夜だ、ただ....」
ひとしきり笑った煉獄はふうっと息を吐いて、不死川を真っ直ぐに見る。
煉獄の炎のような目が不死川を捉え、不死川は少し身を引いた。
チリチリと肌が焼けるような意志の強さに、自分の刹那へ対する疑念がさも杞憂だと言われているように感じてならない。