第4章 肆ノ型. 共同護衛 ~不死川実弥・伊黒小芭内の場合~
最後の言葉に伊黒がぴくりと反応する。
「何を聞いたんだ、余計な事を聞いたのなら今すぐ忘れろ」
『ふふふ、それは私と鏑丸様との秘密です』
「殺すぞ」
『この状態でそう言われましても、説得力がございませんよ?』
イタズラっ子のようにそう言う刹那に伊黒はため息をつく。
先程までの緊張は何処へやら。
コロコロとよく変わる表情に、警戒心を抱くのが馬鹿らしくなってきてしまった。
(調子が狂う...)
刹那に預けていた体を少し起こして、伊黒は刹那と目を合わせる。
『伊黒様?どうかされましたか?』
「小芭内。そう呼べ、敬語もやめろ堅苦しくて気味が悪い。」
早口でそう言いきってから、伊黒はまた刹那へ体を預けた。
「言っておくが完璧に信用した訳じゃないからな。図に乗るなよ刹那。」
一方的に紡がれた言葉を理解し刹那は優しく目を細めた。
言葉は強いが、悪意は感じられない。
それだけで伊黒が悪い者でない事は分かる上に、髪から覗く耳が紅葉のように真っ赤で母性すら湧いてしまう。
『ふふふ、あいわかった。』
伊黒と自分。
確実に互いの溝が埋まりつつあるのを実感しつつ、刹那は伊黒の背中を撫でる。
(このまま何後もなく、今日が終わればいい...)
穏やかな時間を過ごすと必ず頭に浮かぶ小さな望み。
しかし夜はまだまだ長い。