第4章 肆ノ型. 共同護衛 ~不死川実弥・伊黒小芭内の場合~
「俺は彼女を信じる。鬼に食われた人の為花を手向け、鬼にすら慈悲を与えようとするその心そして、圧倒的な強さ。人々の為に動く彼女を、俺は誰がなんと言おうと鬼殺隊の一員と認める!!」
「そんなもの....」
意味が無い。
結局あいつも鬼なのだから。
力強く言い切る煉獄に向けてそう続けようとした不死川の耳に、伊黒の声が届く。
「不死川!煉獄!!鬼が来たぞ!!!」
声にいち早く反応した煉獄が岩陰から身を乗り出す。
続いて不死川も動く。
初めに不死川が見たのは、長い舌をだらりと垂らした口以外顔の無い鬼の姿だった。
その次に見えたのは貴族の娘を守るように背中に隠し、鬼へ刃を向ける刹那。
(速い)
気付くのが遅れたとはいえここに居る柱3人の誰よりも速く鬼の間合いへ入り、
守りの体制をとっている刹那に、不死川は素直に驚く。
「どけよおおおお。今が1番いい味なんだあああ。」
不快な声が不死川の苛立ちが高まるのを他所に
唸る鬼に怯む様子もない刹那の後ろから、貴族の女が金切り声をあげる。
「誰よ貴方!なんなの!なんで私を狙うのよ!私は明日結婚するのに!!嫌よ死にたくない....」
はらはらと涙を流す女に鬼がピクリと反応した。
「ああそうだったああああ。待て待てどれだったかなあああ、この女の相手は、そうだこれだああああ。」
ブツブツと顔を伏せて呟いていた鬼が顔を上げた時、その場にいた全員の動きが止まる。
先程まで口しか無かったその鬼の顔が、今では優しそうな青年の顔に変わったのだから無理もない。
「顔が変わったからなんだと言うのか!」
そう言い鬼の首目掛けて走る伊黒を止めたのは、
「辞めてええええ!!!」
またしても貴族の女だった。
「ああ、貴恵。良かった僕が分かったんだね。」
鬼がニコリと笑う。
呼ばれた貴族の女、もとい貴恵は先程よりも大量の涙を流して刹那の羽織にしがみついている。
『お嬢さん。あの鬼はお知り合いの方ですか?』
この場にそぐわぬ優しい声で刹那が聞けば、
「わ、私の...婚約者.....」
そんな答えが返ってくる。