第4章 肆ノ型. 共同護衛 ~不死川実弥・伊黒小芭内の場合~
「俺は、生きていていいのか...醜く汚らしい血が流れる俺でも、許されるのか...」
他人に聞いてなんになるのかと伊黒は思った。
自分自身が自分に流れる血を許さないのに、只の慰めにしかならない他人の言葉をなぜ求めてしまうのか。
『少なくとも私は、伊黒様にお会いできて嬉しゅうございます。』
いつもの伊黒ならネチネチと文句を垂れていただろう。
【偽善者】【お前に何がわかるのか】【綺麗事】
言えることは沢山あったはずだ。
悪態をついて早くこの腕を振り解けたはずだ。
なのに伊黒はしなかった。
「そう、か....」
それどころか、自分の生を肯定された事に歓喜さえあった。
初めての感情は伊黒を混乱させるには十分過ぎたのだ。
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どれくらい時間が経ったのか、伊黒は拒む事もせず刹那に未だ抱きしめられたままだ。
甘露寺に抱くような恋慕ではなく、母親にあやされているような感覚と心地いい心音にいつの間にか伊黒は刹那へと体重を預ける。
伊黒から穏やかな気配が漂ったのを感じた刹那は少し笑って言った。
『伊黒様は背負いすぎてしまう方なのですね。ですが伊黒様、貴方は1人ではないのですよ?柱の皆様やお館様、それにふふ、鏑丸様も居られるではありませんか』
刹那は伊黒を抱き締めたまま、自分の首に巻きついてきた蛇の鏑丸を撫でる。
教えた覚えは無いのに、当たり前のように鏑丸の名を呼ぶ刹那に伊黒は首を傾げた。
「何故、鏑丸の名を知っている」
『鏑丸様が教えて下さったのです。とても頭の良い方なのですね。伊黒様の事も沢山教えてくださいましたよ。』