第3章 参ノ型. 初任務 ~煉獄杏寿郎の場合~
外に出た鬼は真っ先に、自分が食い散らかした子供達に花を添える刹那を見つけた。
(華奢な体つきをした女の鬼狩りだ、こいつ相手なら勝てる。)
そう考えながら全速力で刹那へ向かっていく鬼。
「私の坊やに近づくなーー!!!!」
そう言い長い爪で刹那の喉元を掻き切った筈なのに、
「え...」
急に近づく地面との距離に、両足を切られたと気付くまでそう時間はかからなかった。
(早い...見えなかった、しくじったもう逃げられない...殺される!!)
逃れられない死の予感にカタカタと震えながらそう考えていると、
『1つ質問してもよろしいでしょうか?』
突如頭上から声が降ってくる。
酷く優しいその声に顔を見上げれば、にこりと微笑んでいる鬼狩りの顔。
今まで自分を見る鬼狩りの顔は険しいものばかりで、そんな目で見てくる者など居なかったものだから女鬼は戸惑ってしまう。
『貴方が食べた子供は皆男の子ばかりですね。何か拘りがおありなのですか?』
笑顔のままそう問いかける刹那に女鬼はおずおずと口を開いた。
「わ、私の、坊やだと思ったの...だから、でも皆坊やじゃなかった、子守唄を歌っても笑ってくれないの...坊やは私の歌が大好きだったのに...」
ボロボロと涙を零しながら言う鬼から刹那は視線を外さない。
『ああ、探し人をされていたのですね。坊やは居なくなってしまったのですか?』
「そうよ!坊やはちょっと迷子になっているだけ...湖に浮かんでいたあの子は、私の子じゃないのよ、きっと、きっと、私の見間違い...」
濁流のように蘇る鬼になる前の記憶が女鬼を困惑させる。