第3章 参ノ型. 初任務 ~煉獄杏寿郎の場合~
「これはまた随分と食っているようだ!」
崖から降り、転がる死体を見ながら煉獄が言う。
小さな手、細い体、
見る限り4、5歳の子供達ばかりのようだ。
目を開けたまま事切れた子供の瞳をそっと閉じてやりながら、刹那は表情を曇らせる。
『惨たらしい...』
小屋へ近づくにつれて濃くなる血の匂いに目眩がしそうだ。
小屋の奥からは女のすすり泣く声が聞こえる。
きっとその声の主こそが、この死体の山を作った張本人なのだろうと煉獄は日輪刀に手をかけながら息を吐く。
「暁天少女、俺が先に入る。君は小屋の外で待機だ!鬼が外に出たら援護を頼む!!」
『あいわかりました』
「うむ!いい返事だ!では行くぞ!!」
そう言って煉獄は勢いよく小屋へと入っていった。
「むっ...!!」
小屋の中は外より更に酷かった。
散乱するかつて子供であっただろう破片や、玩具、血塗れの服。
小屋の片隅には山積みの死体がある。
その異様な空間の中央にいる女の鬼。
腕の中に自分が食った子供を抱き抱え泣いている。
「ああ、また食べちゃった、死んじゃった...早く次を連れてこなきゃ、私の坊やを作らなきゃ....」
壊れたように坊や坊やと呟く鬼。
そんな女の様子に、ジリジリと間合いを詰め、
「よもや!これだけの人を食っておいてまだ満足できないのか!!これ以上犠牲を増やすと言うならば、その首燃やし尽くしてやろう!!」
未だすすり泣く鬼の首に目掛けて煉獄は刀を振り下ろした。
「ひい!!」
(外したか、だが次は仕留める!)
しかし刃は間一髪の所で避けられてしまう。
煉獄が体制を整え2激目を繰り出そうとする一瞬の隙に鬼は煉獄の横をすり抜けて、小屋の外へと飛び出た。
「暁天少女!!行ったぞ!!」