第14章 拾肆ノ型. 遊郭潜入
煉獄を想い微笑んだ刹那の顔に不覚にも宇髄の胸が高鳴った。
不可抗力。
そう表現する他無いだろう。
(ああ、こりゃ煉獄が嵌るのも分かっちまうな...)
宇髄は確かに3人の嫁達を愛しているし、何よりも大切にしている。
それを踏まえた上で、目の前で微笑む刹那を純粋に綺麗だと思った。
元々宇髄の中の人間の割り振りというものは簡潔だ。
好きか、どうでもいいか。
その二択のうち、刹那は勿論前者である。
もし煉獄と恋仲で無ければ自分の嫁にしていた、などと考える程には刹那の事を信頼し好意を持っていた。
実際に何度か口説いてもいる。
まあ毎度ぬらりくらりと躱されてしまうし、視線の先には煉獄がいるしで結果は分かりきったもの。
しかし、それもそれで宇髄としては新鮮で面白かった。
「お前、来世では俺の嫁になれ。派手に大事にしてやる。」
『ふふふ、考えておくわ。』
久方ぶりに冗談めかして言った本音は笑い飛ばされてしまったが、それでこそ刹那だと言うように宇髄はふっと笑い大通りへとその長い足を進めた。
刹那や炭治郎達もまた宇髄の背中を追う。
溢れる人々の波に、4人の姿はあっという間に呑まれて見えなくなった。
彼らはまだ知らない。
この街に潜む鬼の醜悪さと、残酷さの本質を。