第14章 拾肆ノ型. 遊郭潜入
『いいこと?何か危険があったり、鬼を目視したら直ぐに自分の影にいる紫苑達の名を呼んで。そうすればこの子達は炭治郎達の手助けをしてくれるわ。』
言って刹那がしゃがみこみ3人の影をひとなですれば、
ふるりと揺れた3人の影から紫苑達が顔だけを見せた。
先程まで機嫌の悪かった蛍清は甘えるように刹那の手へ擦り寄っている。
猫のようにぐるぐると音を立てる蛍清の喉。
どうやら、幾らか機嫌がなおったようだ。
『炭治郎は紫苑、善逸は烟霞、伊之助は蛍清。皆くれぐれも無理はしない事。紫苑達も全力で炭治郎達を守るのよ、わかったわね?』
「わかりました。」
「はーーい。」
「御意。」
諦めたような声音で返事をした3人は再び影の中へ戻る。
朱嘉もまた刹那の影の中へと。
それを見届けてから刹那は立ち上がり宇髄の元へ近付いた。
やっとかというようにもたれていた壁から背中を離す宇髄。
『煉獄は良かったのか?』
不意に聞かれ、刹那は屋敷を出る前の事を振り返る。
気をつけてと送り出してくれた煉獄、門を出るその時まで繋がれていた手にはまだ煉獄の温もりが残っていて力強く自身を見つめていた双眼が思い出された。
煉獄は真っ直ぐだ。
任務だと知っているから、そこに人々の命が関わっていると分かるから、無理には止めない。
己の恋路等二の次。
第一は人命、そして鬼に脅かされる事のない未来を作ること。
それが煉獄の、鬼殺隊の責務であるから。
ただ、あの時確かに欠片程見せられた彼の反抗心が愛しくゆるりと口角が上がってしまう。
『大丈夫...では無いかもしれないわね。だから早く終わらせましょう。1人も取り零すことなく救って、彼にただいまと言いたいわ。』