第14章 拾肆ノ型. 遊郭潜入
互いに譲らず押し問答を続ける紫苑と宇髄を止めたのは、
「別に良いじゃねえか、任務なんだろ?」
どこから現れたのか、いつの間にやら2人の間を横切った朱嘉の声だった。
『おかえりなさい朱嘉。今回は少し長かったわね。』
「ああ、癸の隊士が指示に従わなくてな。手古摺った...お嬢は変わりないか?」
紫苑と宇髄の事など素知らぬ顔で刹那の頭を撫でる朱嘉。
渦中の2人は置いてけぼりだ。
あっけらかんと言い放った朱嘉に紫苑は頭を抱え、宇髄は勝ち誇った笑みを浮かべる。
「朱嘉、貴方意味が分かってるんですか?後で逢魔に怒られるの私なんですよ?」
「あいつが?あいつならお嬢の着飾った姿見て流石俺の娘だ位しか言わねえだろ。子煩悩だからな。」
「しかし...」
「紫苑お前は本当に頭が硬えな...お嬢が良いって言ってんだ、それでいいじゃねえか。」
はっはっと豪快に笑う朱嘉に紫苑は苦虫を潰したような顔だ。
すっかり勢いを無くした紫苑に宇髄は上機嫌に笑う。
決着、という程堅くは無いが
言い合いはこれで終いらしい。
「って事だ。よろしく頼むぜ刹那。」
そう言ってにこにこと刹那へ話しかける宇髄の後ろで、理解出来ないと言うようにぶつぶつ文句を垂れる紫苑。
普段冷静沈着な紫苑だが、こと刹那に関わる案件には百面相がちだ。
なかなか見られないそんな紫苑の不機嫌な顔を見て、悪戯心に火がついたのか朱嘉は悪い笑みを浮かべる。
閃いたのだ。
炭治郎達にとって願ってもない最良の案、
そして紫苑が最も嫌がりそうな事を。
「俺にいい考えがある。」