第14章 拾肆ノ型. 遊郭潜入
「俺の首のこれは刹那の母親の技の名残でな...大きな傷が壊死する事を防ぎ、技を掛けられた本人が傷を治す為に最も必要な場所へ転移させる。俺はこの技のお陰で今地獄のより深い所で誰に知られる事もなく眠ってる。」
意味がわかるか?と言われ俺は首を縦に降る。
ここ数年人間離れした技を間近で見てきた。
今更驚くことでもないだろう。
刹那の母上がこの技を編み出したのは彼と出会い刹那が産まれてからだというから、彼と過ごす間に何かしら鬼神の恩恵があったのかもしれないと突飛な考えを巡らせる。
でなければ、普通の人間に転移などという術が使えようもないから。
お前は賢いなと呟いて笑う彼の顔はどことなく刹那に似ていた。
「感じるのさ、俺の体に巡る血の熱さを。鼓動の強さを。頭の中で俺の親友が言うんだ、あいつの意志を繋いだ者を導いてくれと。」
こればかりは意味が分からず首を傾げる。
彼の言う親友が誰なのかは分からない。
ただ彼の声音が悲しみを含んでいてその親友がもうこの世に居ない事だけは分かった。
「貴方の親友の意志を繋いだ者とは一体誰なんだ、鬼殺隊なのか...」
聞く俺に彼は振り向く。
先程まで気づかなかったが、波打つ黒髪が風に揺れ彼の耳に現れた飾りには見覚えがあった。
しかし模様は違う。
花札のような形状のそれには鬼灯が描かれ、彼が動く度カラリと音を立てる。
(あれは、そうだあれは少年の物とよく似ている。)
俺の考えている事が分かったのか、彼は耳飾りを撫でながら呟いた。
「そうだ、居るだろうお前の傍にも...花札のような耳飾りをした者が...」
「それは...くっ...」
竈門少年の事なのかと聞きかけた口は突然襲ってくる頭痛により閉ざされる。
一気に白み出す風景の中で逢魔さんはそっと俺に手を振った。
「目覚めの時間だ炎の獅子。いや、杏寿郎。お前と直接会う時もそう遠くない。また会おう、次は刹那と玉藻も一緒に...」