第2章 弐ノ型. 煉獄家
杏寿郎side
『軽薄な言葉をお許しくださいまし。湯浴みして参ります。煉獄様もお休みになられてください、きっと明日から任務でしょうから。』
そう言い残して部屋から去っていく暁天少女の後ろ姿を見送りながら、俺は先程かけられた言葉を思い出していた。
【煉獄様は、寂しくはないのですか...?】
母上が亡くなり、父上がああなってしまってから何度も言われた。
寂しくないのか、
辛くないのか、
可哀想に、
同情と哀れみを含んだ声を沢山聞いたし、その度に「大丈夫」と言う自分。
決して嘘ではない。
母上は居なくなってしまったが、父上も千寿郎も居る。
辛くない、寂しくない、俺はまだ大丈夫。
心配して聞いてくる人々への返事は、何時からか自分への暗示へとすり変わっていた。