第2章 弐ノ型. 煉獄家
「昔からああだった訳ではないんだ!元は情熱のある人だからな!いつかきっと元に戻ってくださる!!しかし先程の君への態度は目に余る物があった!父上の代わりに俺が謝ろう!!」
声は変わらず大きく、表情も明るい。
けれど、
目が合っているはずなのに、どこか遠くを見ているような煉獄様。
(於いたわしや....)
そっと手を伸ばし煉獄様の頬に触れる。
一瞬見開かれ更に大きくなった目を見返しながら口を動かした。
『煉獄様は、寂しくはないのですか...?』
半分哀れみ、半分興味。
お母上が亡くなって、きっと誰かしらに一度は聞かれたであろう言葉を投げかける。
珍しく煉獄様からの返事は無い。
きっと考えあぐねているのだろう。
一緒に住むとはいえ出会って一日。
お互いを知る訳でもない、その上私は鬼だ。
そんな私に自分の身の上や精神状況を何処まで言うべきなのか、考え困っておられる。
『ふふ...』
(所詮鬼と柱、信頼などあったものではないか)
自嘲気味に笑ってするりと部屋を抜け出す。
『軽薄な言葉をお許しくださいまし。湯浴みして参ります。煉獄様もお休みになられてください、きっと明日から任務でしょうから。』
そう言って、半ば逃げるように浴場へと向かった。