第2章 弐ノ型. 煉獄家
今回も例外では無かった。
暁天少女にもいつもの様に答えるつもりだった。
【大丈夫だ!寂しくなどない!】と、
しかし、答えようとしたが出来なかった。
頬に添えられた暁天少女の手が余りにも優しくて、
(心地いい)
等と思ってしまったからだ。
気を緩めると本音が出てしまいそうになる。
そんな事は初めてで、少し戸惑いながら彼女の目を見返した。
慈しみと哀れみと優しさを含んだ目。
その目を見ながら俺は彼女は他の鬼とは違う、そう思い始めていた。
実際、鬼だとわかっているのに彼女に対する嫌悪感と言うものは今の所無いし
千寿郎に向ける笑顔や、自分への態度は計算ではなく彼女の素の優しさなのだろう。
きっと急に話を切りあげたのも、俺への気遣いだ。
概ね、信頼関係や立場の事を気にしているのだろう。
初日から気を遣わせてしまうとは、柱として不甲斐なし。
彼女との今後について俺は頭を悩ませる。
どうしたものか、
近隣の案内をして打ち解けてみようか、
それとも千寿郎も入れて稽古し合ってみるか、
むう....
....
『うむ!やはり考え事は性に合わん!任務あるのみだな!!明日に持ち越そう!』
ぐちぐちと考えるだけなのは辞めて
限界だとばかりにそう声高らかに宣言し、俺は自室へと歩みを進めた。