第2章 弐ノ型. 煉獄家
「ここが君の部屋だ!着物もある!好きに使ってくれ!!」
案内されたのは煉獄様の部屋の隣。
部屋は綺麗に整頓され、一目で男児の使う部屋ではないと分かる。
鏡台の上には化粧品の類まで。
でもそのどれもが、最近使われた形跡の無いものばかり。
(ああ、ここの部屋の主はきっともう.....)
私は愚かだ、確信しているのに確かな言葉を求める。
『この部屋は、誰もお使いにならないのですか?』
疑問をそのまま口にしてしまえば、思いの外返事は直ぐに返ってきた。
「亡き母の部屋だ!足りない物があるなら遠慮なく言ってくれ!直ぐに準備しよう!!」
変わらぬ顔で平然という煉獄様に、少し驚く。
『申し分ありません、お辛い事を...』
「む?なぜ謝る!母上が亡くなったのはもう随分前だ!気にする事は無い!ありすぎる着物も持て余されるよりは、使ってもらった方が母上も喜ばれるだろう!!」
大きな声でそう言う煉獄様の瞳が、一瞬だけ揺れたのは気のせいだろうか。
いやきっと気のせいではない。
歳は私と同じと仰っていた。
子供ではないが、まだ大人でもない。
まだ母が必要な歳だ。
それなのに、
(恋しくはないのだろうか、お父上があの状態なら尚のこと....)
私の考えを悟られたかのように煉獄様が突然こちらを向く。
「謝るなら寧ろこちらだ!暁天少女、どうか父上の事を責めないでやってくれ!」