第11章 拾壱ノ型. 無限列車
傍で泣く炭治郎達には目もくれず、一目散に駆け寄っていつもより小さな煉獄の体を掻き抱く。
『杏、寿郎...?』
刹那がどんなに煉獄を呼んでも
いつもならぎこちなく抱き締め返してくれる煉獄の腕は、だらりと垂れ
優しく微笑む目も、刹那を呼ぶ口も固く閉ざされたまま。
『嫌、嫌よ...逝か、ないで...』
聞こえぬ心音、流れ続ける血。
ぽろぽろと零れる涙と共に徐々に失われる煉獄の体温を直に感じ、刹那の中で何かが切れた。
『鬼門解錠』
刹那が静かに呟いた言葉で、烟霞、紫苑、蛍清、そして猗窩座を追っていた朱嘉までもが呼び寄せられる。
突如現れた4人の鬼神に炭治郎達が驚くのを他所に、刹那は淡々と言葉を紡いだ。
『朱嘉、烟霞、紫苑、蛍清。力を貸してちょうだい....』
煉獄を抱いたまま言う刹那の言葉に、何かを察した朱嘉達は狼狽える。
「ちょっと待てお嬢、まさかあの技を使う気じゃねえよな?」
詰め寄るようにそうまくし立てる朱嘉。
冷静な朱嘉とは対照的に紫苑の動揺が凄まじい。
刹那が答えるよりも早く朱嘉に続くように、反論し始めた紫苑の顔には焦りの色が滲んでいた。
「あれは姫さんへの負担が大き過ぎる!考えなおしてくれ!」
珍しく大きな声を出して異議を唱える紫音に、周りの鬼神たちも同調していて。
これから何が起こるのか炭治郎達には全くと言っていいほどに理解できないが、刹那が危険な事をしようとしているのはわかる。
鼻のいい炭治郎や、耳のいい善逸は特に。
それでも頑なに意志を変えない刹那
に、鬼神達は遂に折れ刹那と煉獄を囲むように立った。
目を瞑り各々の武器を地面へと突き刺せば、瞬間地面に真っ赤な彼岸花が咲き乱れる。
こんな状況でなければ、只只美しい景色だっただろう。
朱嘉達に囲まれ満開の彼岸花の中心で刹那は地面に寝かせた煉獄の顔をそっと撫で、深く息を吸う。
『宵の呼吸、弐ノ型 枯木竜吟 沙華の楔-コボクリョウギン シャゲノクサビ-』