第11章 拾壱ノ型. 無限列車
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「退けぇぇええええ!!!」
煉獄の元へ急ぎ山中を駆け抜けていた途中前方から凄まじい速度で走ってきた猗窩座の拳を受け、刹那一行はその歩みを止めた。
猗窩座に刺さったままの炭治郎の日輪刀を見て、猗窩座が来た方向に列車がある事を刹那は悟る。
何時もの刹那であれば、確実にここで猗窩座を殺してからそちらへ向かったはずだが
『っ、朱嘉!』
「御意」
朱嘉にその場を任せひた走る。
夜明けがすぐそこまで迫っている状況で朱嘉に猗窩座を足止めさせ自分は人命救助へ向かう為、そのように解釈も出来るが
今刹那の脳内にあるのは、ただ一刻も早く煉獄の無事を確認したいという一心であった。
刹那はこの時初めて、鬼を滅殺するという責務より自分の感情を優先させたのだ。
それは、刹那もまた煉獄と同じように煉獄杏寿郎という男を何よりも大切にしているという事でもある。
刹那自身、この感情が何なのか分からぬほど鈍感ではない。
2年間煉獄と過ごして来て、何度も彼の存在に救われた。
その気持ちの名前に気付いたのは1年ほど前だっただろうか。
任務から帰る度に、太陽のような笑顔で自身を包んでくれる煉獄に
いつの間にか刹那は惹かれていたのだ。
積もりに積もった煉獄への思いは、今刹那を突き動かす原動力になっている。
だからこそ、今鬼が目の前に現れようと振り切って煉獄の元へ走るくらいには
煉獄に恋焦がれている自分を受け入れ足を動かしているのだ。
途中目の端に映る折れた煉獄の日輪刀に、先程よりも増したざわめき。
薄暗い林をぬけた先に広がる光景を見て、刹那は自分の胸騒ぎが杞憂でなかったことを知る。
遠目に見える見慣れた背中。
『杏寿郎!!!』
意図せず口から出た言葉は煉獄に届いたのだろう。
ゆっくりとした動作で煉獄が振り向き片目だけになった大きな瞳が刹那を捉えたかと思えば、ふわりと笑ってそのまま目を閉じた。