第11章 拾壱ノ型. 無限列車
合わせた目を逸らされることも無く、ひたすら真っ直ぐに紡がれる煉獄の言葉。
「胸を張って生きろ。己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を喰いしばって前を向け。君が足を止めて蹲っても時間の流れは止まってくれない。共に寄り添って悲しんではくれない。」
朗らかな顔の煉獄とは対称的に、じわりじわりと地面に広がる血が言葉を交わす時間すらもう無いことを物語っていて、
背後に輝く朝日すら滲んでしまう。
「俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば後輩の盾となるのは当然だ。柱ならば誰であっても同じ事をする、若い芽は摘ませない。竈門少年、猪頭少年、黄色い少年。」
辛うじて動く頭だけを動かし3人を見て煉獄は笑った。
「もっともっと成長しろ。そして今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ。俺は信じる。君たちを信じる。」
重く熱い言葉。
静かなこの場に響くのは炭治郎達のしゃくり上げる声だけ。
その声を聞きつつ、煉獄はふと俯く。
こんな時でさえ浮かぶのは刹那の顔ばかりだ。
夜に煙管を吹かす横顔。
おかえりなさいと言って頬を撫でてくれる柔らかな手のひら。
抱きしめられる温度。
己を見つめる瞳。
鮮明に思い出される刹那の記憶。
(ああ、出来ればこの気持ちは...俺の口から伝えたかった...)
自分の生に後悔はないが、これだけは、
この刹那への気持ちだけはと。
しかしもう自分には炭治郎に託すことしか出来ない。
これは残していく者の宿命なのだ。