第11章 拾壱ノ型. 無限列車
あの日確かに母、瑠火の思いと心の火は、
煉獄へと受け継がれた。
そして今煉獄は、母に約束した強きものの使命を果たそうとしている。
例えそれで自分が死ぬ事になったとしても。
振り上げたままだった煉獄の刀は猗窩座の頚へと落ちる。
ミシミシと音が鳴るほどに力強く握られたその炎刀は、猗窩座の皮膚を越え肉にくい込んだ。
「かっ...!!」
呻く猗窩座に、煉獄は更に力を強くする。
まさかまだ煉獄が動けるとは思わなかった猗窩座は、刃の侵入を防ぐことが出来ない。
ミチりと音を立てる猗窩座の頚。
(母上、俺の方こそ、貴女のような人に生んでもらえて光栄だった!)
今は亡き母に思いを馳せ、煉獄は吠える。
「オオオオオオ!!!」
「ぐうっ!!!」
残った右目を潰そうと飛んできた猗窩座の左腕を、煉獄はすんでのところで受け止めた。
これには猗窩座も目を見開く。
(止めた!!信じられない力だ!!鳩尾に俺の右腕が貫通しているんだぞ!)
煉獄が決死の思いで猗窩座を食い止める中、希望が見えた。
白む空に薄らと姿を現した朝日だ。
(まずい!夜があける!!!)
列車の向こうからみえ始める朝日に、猗窩座は焦り始める。
(逃がさない!!)
猗窩座の焦りを感じとった煉獄は更に掴む腕の力を強くし、今にも頚を斬らんとしている。
(絶対に離さない!お前の頸を切り落とす迄は!!!)
一刻も早くこの場から逃れたい猗窩座だか逃げようにも、煉獄に貫通したままの腕は何故か抜けず
左腕も掴まれたまま。
「オオオオオオ!!!」
「アアアアアア!!!」
凡そ死にかけの人間とは思えない煉獄の力に焦る猗窩座の耳に、炭治郎の声が飛び込んできた。
「伊之助動けーっ!!!煉獄さんのために動けーーーっ!!!!」
頭上を見上げれば、飛び上がった伊之助が間近に迫っている。
「獣の呼吸!壱ノ牙!穿ち抜き!!!」
伊之助の刃が猗窩座に届く、
その寸前、猗窩座は地面を蹴り宙へ浮く。
抜けぬ腕を引きちぎったのだ。
猗窩座という支えが無くなり、遂に地面へ膝をつく煉獄。
荒い息を吐きながら、
猗窩座はそのまま陽光から逃げる為林の中へ飛び込んだ。