第11章 拾壱ノ型. 無限列車
息も止まるほどの勢いで腹部に力を込め、何とか止血することに成功する炭治郎。
「ぶはっ!はっ、はあ。」
慣れぬ事に息切れを起こす炭治郎を見つめ、煉獄は言う。
「呼吸を極めれば様々なことが出来るようになる。何でもできる訳では無いが、昨日の自分より確実に強い自分になれる。」
「...はい。」
炭治郎の呼吸が落ち着いたのを確認して、煉獄はにこりと笑った。
「皆無事だ!怪我人は大勢だが命に別状は無い。君はもう無理せず...」
ドオン!!!
突如響く轟音。
煉獄が炭治郎を労い、周りの状況を伝える最中それはやってきた。
災厄。
激しく立ちのぼる土煙。
中心にいる何者かをはっきりと認識した瞬間、炭治郎の心臓はドクリと嫌な音を立てた。
煙の中から現れた鬼の目。
[上弦の参]
瞳に刻まれたその文字は、満身創痍の炭治郎を追い込むには十分すぎる。
夜明けも近く、このままなにも起こらずに終わると思っていた。
あとほんの数分だったのに。
まずは起き上がらねばと炭治郎が思考するそのコンマ数秒。
その数秒の内に炭治郎へと迫った鬼の拳を防いだのは煉獄だ。
「炎の呼吸、弐ノ型、昇り炎天!」
煉獄の攻撃を受け腕を割られた鬼は、一度後方へ退くが瞬く間に傷口は再生してしまう。
「いい刀だ。」
腕から滴る血をべろりと舌で舐めとる鬼。
不敵に笑う上弦の鬼に、煉獄は毅然とした態度で問いかける。
「何故手負いの者から狙うのか理解できない。」
「話の邪魔になるかと思った。俺とお前の。」
さして悪びれる様子もなく言い放つ上弦の鬼に、煉獄の眉がぴくりと動く。