第11章 拾壱ノ型. 無限列車
刹那side
朝からずっと胸がざわめいていた。
何をしていても落ち着かず、見かねた千寿郎に偶にはしっかり休むようにと怒られてしまう始末。
どうにも嫌な予感がしてならない。
昼間任務へと出た杏寿郎は当たり前だがまだ戻らず、窓から差し込む月明かりが何時もより切なく感じるのは気の所為だろうか。
気を紛らわすために開いた本も、表紙を開いた所から少しも進んではいない。
思えば父を亡くした時もこんな胸騒ぎがしたもので。
寒気にも似たこの感覚が私は嫌い。
ふと脳裏に浮かぶ杏寿郎の姿。
(まさか...杏寿郎に、何か....)
そう思ってしまえばいても経っても居られず、羽織と刀を引っ掴んで外へと飛び出すしか自分に出来ることは無かった。
途中朱嘉達とすれ違うが唯ならぬ私の雰囲気に気づいたのか、何も言わず私の影に入り朱嘉はその姿のまま後を追って来る。
(ありがたい...)
いつも私の感情を第一に行動してくれる朱嘉達に心の中で感謝する。
(確か任務地は列車...)
朱嘉達の能力を使えば、列車が向かったであろう場所に夜明け前には追いつく筈。
彼は柱だ。
万が一にでも死ぬことはないだろうが、
それでも心配で、
(どうか、どうか私が行くまで何も起こらないで。)
唇をかみ締め、そう強く願いながら夜も更け始めた道を私はひたすら突き進んだ。