第11章 拾壱ノ型. 無限列車
逢魔の手助けそして禰豆子の血気術により縄が焼かれたという事もあり、煉獄は炭治郎達より少し遅れて目を覚ます。
開眼直後目の前に飛び込んできたのは、車両内の異様な光景。
無数の触手が壁一面にへばりつき、乗客を狙っている。
数本の触手を切り刻み、悠々と車両内を歩く煉獄の後ろ姿は流石柱と言うべきか
焦りや恐れの感情など微塵も無く自信に満ち溢れた広い背中だった。
「うたた寝している間にこんな事態になっていようとは、よもやよもやだ。柱として不甲斐なし。穴があったら、」
一呼吸置いて見栄を切り、宙に浮く煉獄の体。
「入りたい!!!」
言ったと同時に素早く細かな斬撃を触手に食らわせ、辺り一体を焼き尽くしながら前方の車両へと消える其の姿。
あの一瞬でこの列車自体が鬼と融合したのだと悟った煉獄は、乗客を守る炭治郎達の元へと急ぐ。
煉獄の移動により車体は大きく揺れ、 その激しさ故に炭治郎は耐えきれず床へ転がる。
「な!何だ今の!鬼の攻撃か?!」
驚きつつも、体制を立て直せば
「竈門少年!!」
凄まじい勢いで煉獄が炭治郎に詰め寄っていた。
「煉獄さん!?」
燃える髪と印象的な炎の羽織を靡かせ、一瞬にして触手を消し去った煉獄の目覚めは炭治郎にとって救いでしかない。
「ここに来るまでにかなり細かく斬撃を入れてきたので、鬼側も再生に時間がかかると思うが余裕はない!手短に話す!!」
「はい!!」
背筋を伸ばした炭治郎に、煉獄は素早く指示を飛ばす。
「この汽車は8両編成だ!俺は後方5両を守る。残りの3両は黄色い少年と、竈門妹が守る。君と猪頭少年は、その3両の状態に注意しつつ鬼の頸を探せ。」
汽車と融合してしまった魘夢に、頸なぞあるのか。
浮かぶ疑問に、でもと口を開けば煉獄の顔が更に炭治郎へと近づいた。
「どのような形になろうとも、鬼である限り頸はある!!俺も急所を探りながら戦う!君も気合いを入れろ!!」
そう喝をいれ、煉獄は再び後方車両へと戻っていく。
(凄い、見えない...さっきのは煉獄さんが移動した揺れだったのか。状況の把握と判断が早い!5両を1人で...)
暫し呆然とする炭治郎だが、
(感心してる場合じゃないぞ馬鹿!やるべき事をやれ!!)
ハッとして立ち上がる、煉獄に託された自分の責務を全うする為に。