第11章 拾壱ノ型. 無限列車
どれ程走っただろうか。
右へ左へと走り続け、手探りでようやく他とは違う抵抗のある風景を見つけた。
「あった。風景は続いているけど、これ以上進めない。」
掌に感じる壁を撫でて、これが聞いていた夢の端だと知る。
目的までもう少しという気持ちと、ここから精神の核を探さねばならないという焦れったさから女は歯軋りした。
素早く帯の下から隠していた錐を取り出す。
これは魘夢が4人に渡していた物だ。
力一杯錐を握りしめ未だギリギリと歯音を立てながら、女はカッと目を見開く。
血走ったその目はまるで鬼。
(早くこいつの精神の核を破壊して、私も幸せな夢を見せてもらうんだ!!)
錐を振りかぶり切り裂いたその先、飛び込むように入り込んだ煉獄の無意識領域は燃えていた。
轟轟と燃え盛る地面と重い空気。
焦げ付くような匂いが鼻を侵し、決して居心地のいいものではない。
(変な、無意識領域....熱い、燃えてる...急がないと。)
熱さに顔を歪めながら女は精神の核を探してひた走る。
「はぁ、はぁ...あっ...見つけた。精神の核。赤いのは初めて見た。」
随分探して遂に見つけた真っ赤な精神の核。
硝子玉のようなそれは、眩しい程の光を放っていた。
「これを壊せば...私も...」
一歩ずつ核との距離を詰める。
壊してしまえば幸せな夢を見られるはずだった。
核は脆い、簡単な事だ。
しかし、
「よぉ...ここに何か用かい?」
女が瞬きする間に先程迄は居なかった男が煉獄の核を守るように立っていた。
それは先程煉獄の夢の中で見た縁側の男で、
「だ、誰よあんた!何でここに入れるのよ!!」
彼を見て固まりつつも激怒する女に、男は薄く笑う。
「俺の事なんかどうでもいいんだよ、それより...精神の核を破壊して廃人にするって計画だったか??鬼もひでえなぁ。こんな危険な仕事を人間にやらせるたあ、あんたも不憫だ...」
全てを悟ったように言う男に女は戸惑う。
自分達しか知らぬこの計画が筒抜けである上に、何故目の前の男が魘夢の縄を使うことも無くこの夢の世界に干渉できているのか
検討もつかないからだ。