第11章 拾壱ノ型. 無限列車
人が消える無限列車の調査。
そう名目付けられた今回の任務に、煉獄、そして噂の少年炭治郎と我妻善逸、嘴平伊之助が向かわされたのは
煉獄が刹那への恋を自覚してから1週間ほど経った日の夕刻であった。
一向に姿を捕えることの出来ない鬼、しかし既に4人は鬼の術中に嵌っている。
異様な空気と共に現れた巨大な2匹の鬼を見事倒し、炭治郎達は煉獄を取り囲んで囃し立てる。
車両内には煉獄の豪快な笑い声が響いて。
しかし、
これは夢。
あまりにも精巧な夢。
意識の切れ目があった訳でも、不自然な事をされた訳でもない。
知らぬ内に1人また1人と夢の中へ落ちていて、4人は自分達が眠った事さえ気付いていない。
これをやってのけた鬼の名は魘夢。
夢の虜となった人間達を使って鬼狩りこ精神の核を破壊し、廃人となった所を殺す。
それが注意深い彼のやり口である。
魘夢の作った縄を対象と自分に結びつけ、眠りに落ちることで相手の夢の中へ入る事が出来る。
たったそれだけでいいのだ。
しかし、もし夢の中に入っている途中、縄を切られることがあれば本人以外の人間はその夢から現実へ帰る事は出来ない。
もちろん魘夢はその事を人間達に話してはいない。
否、彼にとっては話す必要すらないのだ。
魘夢にとって協力してくる人間は使い捨ての駒に過ぎないのだから。
そんな事も知らず4人の夢に入り込んだ人間達は各々精神の核を探す。
煉獄の精神に入り込んだのは若い女だ。
煉獄の精神の中で、彼に見つからぬように核を探す。
「危ない、本体がいる...」
最新の注意を払いながら煉獄邸を飛び出す女。
本体に見つかってしまっては元も子もない。
焦りからか何度も地面に足を取られつつ必死で歩みを進める。
道中煉獄邸の縁側に座る人影を見つけるが、これは夢だとさして気にもとめなかった。
それがいけなかった。
その人影は、決してこの精神世界にも現実世界にも居るはずのない者だったのに。