第11章 拾壱ノ型. 無限列車
そんな宇髄の横から現れた待望の団子を受け取りながら、そのまま1つ口へと運ぶ。
口内に広がる甘さにゆるりと目尻が垂れてしまう位には美味なのだが、二口目を頬張る前に串ごと宇髄に取り上げられてしまった。
悪態をつく間も無く、真剣な表情の宇髄ががっしりと俺の肩を掴んで
「煉獄、お前そりゃ恋だ。」
などと言うものだから危うく口に残っていた団子を喉に詰まらせるところだった。
「こ、恋だと?」
なんとか飲み込み、聞けば強く首を縦に振る宇髄。
「お前の話を聞く限り、どう考えても恋だろ。祭りの神が言うんだ、間違いねえ。煉獄、お前気づけば1日あいつのこと考えてたりしねえか?」
言われて考え込む煉獄。
思い当たる節など数え切れぬほどあった。
ふとした瞬間に刹那の顔が浮かぶし、何処かに出掛けても、はたまた誰かとの任務の際も浮かぶのは刹那の事ばかり。
これは刹那に似合いそうだとか、
刹那は喜んでくれるだろうかとか、
刹那は今何をしているのだろうかとか、
日常の中のたわいない事でも全て刹那に繋げてしまう自分が居る。
(そうか俺は、刹那が好きなのか...)
自覚してしまえば早いもので、自然と己の顔に熱が集中するのが分かった。
その顔を見て宇髄が明らかに呆れた表情をしたから、今自分が相当酷い顔をしている事が理解できる。
「お前無自覚だったのかよ...」
「う、うむ...」
宇髄の問いに歯切れの悪い返事をしながら新しい団子に手を伸ばしてみるものの、
動揺しているせいなのか、最早先程の柔らかな甘みなど感じる事も出来なかった。
横から聞こえる宇髄の恋愛指導を右から左へ受け流しながら、俯く。
今迄ずっと俺の人生の大半は鍛錬の日々であった。
だからというのもなんだが、誰かに恋慕するのは初めててこれからどうしたらいいのか分からないのだ。
出来ることなら気持ちの整理がつくまで刹那とは距離を置きたい。