第10章 拾ノ型. 炭治郎と禰豆子
固まる胡蝶に炭治郎は、
「まあ全部俺が勝手に思ってるだけなんですけど。」
と、照れたように俯いた。
胡蝶は嬉しかった。
自分の大切な友人を受け入れて貰えた事が。
そして一度会っただけの炭治郎にすら心開かせてしまう刹那の器に、なんだか少し誇らしくなる。
もう一度炭治郎に微笑んでから、
「そうですね。刹那さんは凄く、優しいんです。ですよね?」
そう言って後ろを振り向いた。
つられて炭治郎も振り向く。
そこには気配こそ無かったが、確かに刹那が立っていた。
湯浴み上がりだろう。
寝巻きにあの黒い羽織を着ただけの軽装、白い肌は少しだけ紅く蒸気していて、
だらりと垂らされた美しい長い黒髪は、しっとりとまだ水気を含んでいる。
『驚かそうと思っていたのに、しのぶは勘が鋭過ぎるわ。』
「ふふ、ごめんなさい。」
ぷうっと頬を膨らませて炭治郎と胡蝶の間に無理矢理座った刹那に、炭治郎の胸が高鳴る。
ふわりと刹那から香った香のせいなのか、緊張して先程のように喋れない。
普段周りにいる女子と言えば、母か妹だった炭治郎にとって男女のあれこれなど無いに等しい。
故に、寝巻きとは言え無防備な刹那の姿は年頃の炭治郎には刺激が強すぎるのだ。
その証拠に、炭治郎は耳まで真っ赤にしたまま刹那から目を逸らし続けている。