第10章 拾ノ型. 炭治郎と禰豆子
少し考える素振りを見せてから、胡蝶は、ええ、と小さく頷いた。
答えた胡蝶の匂いが優しいものに変わったのを炭治郎は見逃さない。
そのまま胡蝶は先程の重い空気とは打って変わって、楽しげな表情で色々な事を炭治郎に教えてくれた。
刹那の人柄だったり、強さだったり、
柱になる迄の過程や、2年前のあの事件の事だったり。
話が進むにつれ、怒ったり驚いたり悲しそうにしたり笑ったりと
コロコロ変わる炭治郎の表情。
それを見て胡蝶は鈴を転がしたような笑い声をあげる。
「君の驚きは最もです。鬼殺隊という名の組織に、鬼の少女や多数の鬼神が在籍していること...先日隊律違反で裁かれかけた君からしたら納得できない事も多いでしょうね。」
言った胡蝶を真っ直ぐ見つめたまま、炭治郎は強く首を横に振った。
きらきらと輝くその目は空に浮かぶ月よりも綺麗だ。
「最初はなんでだと思っていたけど、しのぶさんの話を聞いて分かりました。宵柱、刹那さんはとても温かい人なんだって。1度しか会ったことは無いけれど、俺や隠の人を見るあの人の目や口調は凄く優しかったから。」
そう言って笑う炭治郎。