第10章 拾ノ型. 炭治郎と禰豆子
炭治郎も胡蝶の姉と同じように、
鬼に同情してしまう男だから。
それをわかっているから、胡蝶は炭治郎に自分の姉の夢を託そうとしたのかもしれない。
少しだけ柔らかくなった表情の胡蝶が、炭治郎を見やる。
「炭治郎君、頑張ってくださいね。どうか禰豆子さんを守り抜いてね。自分の代わりに君が頑張ってくれていると思うと、私は安心する。気持ちが楽になる。」
そう言った胡蝶に、炭治郎はキッと表情を引きしめた。
「頑張ります....あの、もう1つ聞きたいことがあるんです。宵柱と呼ばれる人のことについてなんですけど...」
ふと、思い出したように炭治郎が胡蝶へ問い掛けた。
「宵柱.... 刹那さんの事を何故君が?」
予想外の問いかけに驚きの声を漏らす胡蝶を見ながら、炭治郎は頭をかく。
「俺達の裁判があった日にたまたま会って...そうか、刹那さんと言うんですね....あの、あの人が鬼だという事皆知ってるんですよね?」
聞いていいものか悩んでいる。
どうにも落ち着かない炭治郎の態度で、大方そう考えているだろう事は手に取るようにわかった。