第10章 拾ノ型. 炭治郎と禰豆子
「なんだかいつも怒ってる匂いがしていて、ずっと笑顔だけど...」
焦ったように言い訳を言う炭治郎。
そんな炭治郎に反して胡蝶は至って冷静に答える。
「そう...そうですね。私はいつも怒っているかもしれない。鬼に最愛の姉を惨殺された時から。」
消え入りそうな胡蝶の声。
聞いてはいけなかったかもしれないと、後悔に眉を下げる炭治郎。
しかし胡蝶は淡々と言葉を紡ぐ。
鬼に同情していた今は亡き姉の最後を語る時の胡蝶は、酷く痛々しかった。
「哀れな鬼を斬らなくてすむ方法があるなら、考え続けなければ。姉が好きだと言ってくれた笑顔を絶やすことなく。だけど少し....疲れまして。」
鬼にどうしようもない嫌悪感があると語った胡蝶に、炭治郎は何も言えない。
炭治郎は禰豆子が自分の妹だから、例え鬼でも無条件に守りたいと思う。
けれど、他人からすれば結局禰豆子も他の鬼と一緒で倒す対象でしかないと心のどこかで分かっているからかもしれない。
"鬼を滅殺してこその鬼殺隊"
柱合会議の際に、不死川が言い放った言葉が頭に響く。
鬼殺隊に所属する皆それぞれ、鬼へのやるせない感情を抱えているだ。
恨みや怒り、悔しさ。
分かっている。
重々それを理解した上で、
それでも炭治郎は、その考えに賛同が出来ないのだ。