第10章 拾ノ型. 炭治郎と禰豆子
「....あの、どうして俺達をここへ連れて来てくれたんですか?」
急に訪れた沈黙に耐えきれなかったのか、ふと炭治郎が長く疑問に思っていた事を聞く。
どちらかと言えば胡蝶は最初、禰豆子を殺そうとしている人間だった筈。
今思い出しても恐ろしい。
那田蜘蛛山での胡蝶は本気だった。
きっとあの場で禰豆子を殺したとして、胡蝶はなんら変わること無く何時もの笑顔で炭治郎に接しただろう。
そう思ってしまう程に胡蝶は淡々と禰豆子の首を狩ろうとしたのだ。
あそこにもしも冨岡が居なかったらと思うと、ゾッとする。
だからこそ尚更何故炭治郎だけでなく、禰豆子の面倒をもかってでてくれたの分からずにいた。
「禰豆子さんの存在は公認となりましたし、君たちは怪我も酷かったですしね。」
炭治郎の心境に反して胡蝶はあっけらかんと答える。
「それから....君には私の夢を託そうと思って。」
「夢?」
「そう。鬼と仲良くする夢です。きっと君なら出来ますから。」
胡蝶の語った《夢》
落ち着いた声でまるで本当にそれを望んでいるかのような表情と口調だが、
「怒ってますか?」
その内に秘めている真っ黒な感情をも炭治郎の鼻の前では全て筒抜けなのだ。