第10章 拾ノ型. 炭治郎と禰豆子
「ちょっと待ってください!!」
それこそもげてしまうのではと心配になるほど力強く柱を抱き込んで、動いてたまるものかと言うようにしがみつく炭治郎。
まるで夏場の蝉だ。
「その傷だらけの人に頭突きさせてもらいたいです!絶対に!禰豆子を刺した分だけ絶対に!!!」
なおも叫ぶ炭治郎と、炭治郎を引っ張る隠の怒鳴り声。
双方の声が響く中そっと時透が動く。
小さな手から飛ばされた小石は見事に炭治郎に直撃し、不満爆発な炭治郎を大人しくさせた。
「お館様のお話を遮ったら駄目だよ。」
「もっ申し訳ございませんお館様!」
「時透様!」
「早く下がって。」
半泣き状態の隠に冷たく言い放ってから時透はまたお館様へと視線を戻す。
どうやら今日の時透は虫の居所が悪いらしい。
ビリピリと漏れでる時透の怒りの感情に、隠は慌てたように炭治郎を担ぎ直した。
隠の肩の上で揺られながらその場を後にする炭治郎だが、その耳にはお館様の呟きがしっかりと聞こえる。
「炭治郎。珠世さんによろしく。」
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「ちょっと待って!!今...今...!!ちょっと待ってくださ、い!!」
あれからずっと暴れ続ける炭治郎を黙らせる隠。
もとい、隠の拳。
痛みに悶える炭治郎の目の前には涙でぐちゃぐちゃになった、隠の悲惨な顔があった。
「お前ェエ!!もう喋るなァ!!お前のせいで怒られただろうが!!」
「漏らすかと思ったわ!」
「柱すげえ怖いんだぞ!空気読めよ察しろ!!」
炭治郎に泣きながら文句をたれ、柱達から脱兎のごとく逃げる隠。
早くあの柱独特の重々しい圧がかからない場所へ行きたいと願う。