第10章 拾ノ型. 炭治郎と禰豆子
まあ、妥当だろう。
先日の対下弦の鬼との戦闘で死にかけたのだ。
まずは倒せるように強くなれと言うもの。
お館様の説法の後ろに聞こえる、柱達の堪えたような笑い声が耳に痛い。
「炭治郎も口の利き方には気をつけるように。」
「は...はい。」
すっかり羞恥で真っ赤になってしまった炭治郎に、柱達への態度の改めまで叩き込むのだからお館様も優しそうな顔をしてこれでなかなか意地悪である。
そのまま視線は移り、伊黒と不死川へと注がれた。
「それから実弥、小芭内。あまり下の子に意地悪をしない事。刹那がここに居たら、2人とも大目玉だったよ。」
《刹那》
その名前が出た瞬間、不死川と伊黒の殺気が消え失せる。
そのまま渋々と言ったようにお館様へ返事をするものだから、炭治郎は目を白黒させた。
無理も無い。
炭治郎は刹那の事を知らないのだから。
「炭治郎の話はこれで終わり。下がっていいよ。そろそろ柱合会議を始めようか。」
そんな炭治郎を他所にお館様は話を切りあげる。
それと同時に胡蝶がそっと手を挙げた。
大方、炭治郎の傷の手当についてだろう。
案の定胡蝶の口から出たのは、自分の屋敷で炭治郎を預かるという内容の言葉で
それを合図にどこに居たのか隠がものすごい速さで炭治郎と禰豆子をかっ攫う。
余程この場に留まりたくないのだろう。
この一瞬の速さだけ見れば柱にも引けを取らない。
しかし、禰豆子を傷付けられた炭治郎が大人しくこの場を離れる筈がなかった。