第9章 玖ノ型. 母襲来
「俺はそんな大それた人間ではない。太陽と言うなら刹那がそれだ。関わった人間は皆彼女を慕い、暖かい気持ちになる。そんな彼女にどれだけ救われたか...なのに、俺は...」
「今回の事を、悔いておるのじゃな。」
煉獄の考えを見抜いた玉藻はただ静かにそう言う。
責めるわけでも怒るわけでもなく、
ただただ静かに。
煉獄は問いに答える事無く黙ったまま握りしめた拳を見つめる。
浮かぶのは真っ赤な部屋の中で固く目を閉じ、烟霞に抱きすくめられていた刹那の姿。
守ってやりたいと思っていただけに、煉獄にとってその光景は自分の認識の甘さを突きつけられたかのようだった。
「お主は刹那の事を人一倍大切に思っているように妾は感じる。何がお主をそこまで駆り立てるのじゃ?」
もっともな疑問。
母として、娘を預ける相手を見定めているのだろう。
しかしその言葉に煉獄の表情が少しだけ和らいだ。
「彼女の笑顔が好きだ。こちらを真っ直ぐ見つめる目が好きだ。優しく俺を呼ぶ声が好きだ。触れる手も、強く戦うその姿勢も全て大切なんだ。」
優しく目を細める煉獄。
息継ぎすることなく言い切る煉獄に玉藻は目を見開く。