第9章 玖ノ型. 母襲来
そう言い玉藻は柱一人一人に目を向ける。
「不死川実弥。お主は真正面から刹那に疑念を吐きつけたが、理解しようとしてくれた。ありがとう。」
移り、
「伊黒小芭内。そちは刹那に自分の弱味を見せてまでも刹那と心を分かち合ってくれたな。」
また移り、
「時透無一郎、悲鳴嶼行冥。そなたらは曇りなき眼で刹那を見定めてくれた。」
そのまま流れ、
「宇髄天元。過ちを侵しつつも、後悔する勇気を持つ者。刹那を柱に推薦したと聞いた。その目は確かじゃ。」
視線はさらに横へ。
「冨岡義勇。刹那へ歩み寄り、価値観の共有という素晴らしいものを教えてくれた。」
次は後方へ。
「胡蝶しのぶ、甘露寺蜜璃。苦しむ刹那を支え、かけがえのない友という存在になってくれたな。」
遂に視線は止まる。
「煉獄杏寿郎。常に刹那を思い、守ろうとしてくれた事妾は決して忘れぬ。」
いい終わり玉藻はまた頭を下げた。
横に居る鬼神も同様に。
「妾と逢魔の愛しき娘を、信じ返しきれぬほどの優しさを与えててくれたそなた達に感謝している。刹那に生きる幸せをありがとう。」
「露柱よ頭を上げてくれ。」
「そうだ、俺達は刹那に貰ってばかりだ。」
「感謝される程大それたことはしていない。」
「そうよ!私達の方こそ刹那ちゃんに沢山感謝してるのに。」
狼狽える柱達を他所に何度も何度も感謝を述べて、頭を下げ続ける玉藻。
これが彼女なりの筋の通し方なのだろう。
頑なに顔を上げない玉藻と、柱達のお互い譲らぬ押し問答は深夜まで続いた。