第9章 玖ノ型. 母襲来
奔放な性格の玉藻に朱嘉達鬼神が振り回されているのは、誰の目に見ても明らかだ。
まあ、これ位でなければ鬼神の長と結婚しようなどという思考には至らないだろう。
そんな掴みどころのない玉藻を見ながら、甘露寺がおずおずと手を挙げた。
「あの、露柱様はどうして急にここに来たんですか?刹那ちゃんのお見舞い、ってだけじゃないですよね?」
それはここに居る柱全員が思っていた事だった。
娘の見舞い。
確かにそれも理由ではあろうが、あまりにも素直に刹那の傍から離れた所から
それだけが理由では無い事は一目瞭然だ。
玉藻は少し驚いた顔をしてから、煙管を傍らに置き深々と頭を下げる。
「妾は、お主らに感謝しに来たのじゃ。」
その言葉に驚いたのは甘露寺だけではないだろう。
実際他の柱たちも目を見開いたまま動けない。
自分達に改めて感謝されるような事がないと思っているからだ。
今回だって、結局刹那を守ったのは朱嘉達だ。
自分達はことの成り行きを見ていただけ。
なのに何故感謝されるのか。
「娘を信じてくれたじゃろう。あの子は昔から敵視される事が多くてのう。じゃが最近のあの子の手紙は楽しそうじゃ。それは、お主達のお陰だと思うておる。」