第8章 捌ノ型. 悪意には悪意を
「はぁはぁ、朱嘉!!」
呼んだ相手は庭に面した縁側に1人座っていた。
月明かりに照らされた紅い瞳が煉獄を捉える。
何も言わず自分の隣をポンポンと叩いて、座れと促す様は煉獄が来る事を知っていたようだ。
大人しく隣に座った煉獄を見てから朱嘉はため息をついた。
「何が知りたい。」
言われて、全てをと答える煉獄に朱嘉は笑みを漏らす。
「強欲な奴だな。」
そう言って空を見上げた朱嘉。
暫しの沈黙。
どれ位の時間そうしていたか分からないが、再び煙管に火を灯しながら朱嘉はぽつりぽつりと語り出す。
「俺と逢魔は、逢魔が長になるずっと昔から相棒だったんだ。2人で絶対に鬼舞辻をたおすんだって、俺と逢魔ならなんだって出来ると信じて疑わなかった。そしてあいつは俺達の期待を一心に受けて長になった。」
刹那の父親の話をする朱嘉は、昔を懐かしむように楽しそうな表情をする。
2人で倒した鬼の数を競い合った日々だとか、
鍛錬をサボって怒る年上の鬼神から逃げ回った日の事だとか。
まるで今もまだその情景の中に居るように話す朱嘉から、煉獄は目を逸らせない。