第8章 捌ノ型. 悪意には悪意を
「汚い物は、刹那様に似合わない...」
そう呟き鬱血痕の上にそっと手を当て数秒。
離された手の下は、元通りの白い肌へと戻っていた。
「よもや...跡が消えた...」
何が起こったのかわからない煉獄を他所に、烟霞は手をとめない。
肩、腕、胸元、脚と同様に鬱血痕を消し、
最後の鬱血痕を消す頃には、険しかった刹那の寝顔が安らかなものへと変わる。
満足気な表情をした烟霞はその視線を煉獄へと向けた。
「お前は俺達に聞きたい事があるのでは無いのか?先程何か言いかけただろう。」
突如確信をつかれた煉獄は、動揺を隠しながら息を一つ吐き
「君達は、刹那の何なのだ?」
聞こえるか聞こえないかの声でそう呟く。
しかし鬼神達にはしっかりと聞こえたのか、少し考える素振りを見せてから紫苑が答えた。
「姫さんにとって何なのかと言われると難しいです...部下、という程堅くはないし、私達が一方的に慕って忠誠を誓っていると言った方がしっくり来るかもしれませんね。」
紫苑の答えに蛍清が出された茶菓子を頬張りながら、うんうんと頷く。
「私は大怪我を負い死にかけていたところを姫さん救われた身ですし。蛍清は幼い頃の姫さんに一目惚れしたとかふざけた事を抜かしていましたね。烟霞はどうしてでしたっけ?」
「俺は逢魔を暗殺しようとして、逆に諭された側だ。」
「ああ、そんな事言ってましたね貴方。」
「あ、暗殺しようとした?」
サラリと言った烟霞。
しかし煉獄は聞き捨てならないというように身を乗り出した。
てっきり鬼神も鬼殺隊と同じように、絶対的な長に無条件で従っているのだろうと思っていた煉獄は驚く。