第8章 捌ノ型. 悪意には悪意を
同日深夜 煉獄邸
あの後朱嘉達4人は裁判を終えたその足で煉獄に案内され、彼の邸宅へと来ていた。
と言うのも、未だ目を覚まさないままの主、
刹那が煉獄邸に運ばれているからなのだが。
千寿郎は兄の連れてきた客人に驚きながらも、直ぐに順応し茶菓子なんぞを振舞っている。
床に伏せったままの刹那を囲むようにして煉獄と朱嘉達は一息つく。
何故まだ目を覚まさないかはっきりとは分からないが、きっと精神的なものだろうと胡蝶は言っていた。
半ば無理やり甘露寺に持たされた見舞いの桜餅を枕元に置き、煉獄はそっと刹那の頬を撫でる。
壊れ物を扱うかのような煉獄の仕草に蛍清がケタケタと笑った。
しかし笑ったのも束の間。
一瞬で真顔に戻った蛍清の視線の先には、刹那の首元に咲くおびただしい数の鬱血痕。
「気に食わないな〜。やっぱりあいつら俺が殺してやればよかった。」
物騒なことを言う蛍清に紫苑がため息をつく。
「貴方に殺されたら後始末が面倒なんですよ。貴方、肉片散らかすでしょう?」
当たり前のように返された悪態に煉獄は冷や汗が止まらない。
暫しの穏やかな雰囲気に忘れかけていたが、今自分の目の前にいるのは鬼神。
実力も未知数な今、何が地雷になるかわからない。
まずは彼らを知る事から始めよう。
「君達は...っ!」
意を決して言葉を発し始めた煉獄の出鼻を挫いたのは、烟霞だった。