第9章 さよならの定義
行かないで、なんて言える訳もない。
言ったところで、帰ってくる訳もないのだから。
ぽろぽろと溢れる涙を拭いながら、なまえは思う。
あの時、なんて答えればよかったのだろうか。いくら考えても、正解なんて判らない。
何故もっと早く気付かなかったのだろうか。しつこく声を掛けなかったのだろうか。私はいつも、昔から、こうやってたらればばかりだ。失ってからその重みに気付いて、気付いた時にはもう遅い。
気付いていれば、何かが変わっていたのだろうか。否、きっと私が気付いたところで、何も変えられなかっただろう。
最後に見た彼の顔は今までと違って、どこか、吹っ切れたように生き生きとしていた。彼は、自分の正義を貫くことを決めたのだ。守りたい者を守る道を選んだのだから。
大好きなクラスメイト。
大切な友人。
五条にとって、たった1人の親友。
たとえ、次に会う時が、殺し合いの未来だったとしても。
生涯、忘れることはないだろう。
三年間の青い春。君と過ごした、1分1秒を。