第17章 残響のマリオネット
「ーーーオイオイオイ、七海ィ。僕がいない間になまえと何話してたんだよ」
空から降ってきたような軽薄な声が、後ろから聞こえてきた。うんざりとした顔で、七海は答える。
「別になんだっていいでしょう」
『だめ。なまえについて他の誰かが知っていて僕が知らないなんてことはあってはならない。で、何話してたんだよ』
「……はあ。大したことは話していませんよ。私にまでみっともない嫉妬をするのは辞めてください」
『そうだよ悟。いい加減鬱陶しい』
「だってさぁ、こんなに可愛いんだよ。嫉妬しない訳がないでしょ」
先ほどのカクテルと同じくらい甘ったるいことを言いながら、五条はなまえの身体を後ろからぎゅうう、と抱きしめた。七海に見せつけるように。そんな行動にイラッとしながらも、七海は続けた。
「まぁ、わからなくもありません。なまえさんは昔から可愛い女性(ひと)ですから」
「オイ七海、オイ。まさかオマエもなまえを狙ってた口か?」
「……なんでそうなるんですか」
「なまえ、オマエ今この瞬間から七海の半径3メートル以内に近付くの禁止な。男はみんな狼だから」
『そんなに離れてたら会話もできないだろ』
静かなバーに、大人になった三人の―――対照的な声が響く。
呪術師たちの、夜は更ける。
数多、渦巻く辛酸と―――舌に残るような甘さを抱いて。