第7章 不協和音
二日目は、朝から忙しかった。
身体検査なんて言っていたけれど、実のところなまえの予想通りただの力試しだった。
朝から晩まで呪術連の呪術師相手に訓練させられて、高専でこなす任務よりもよっぽど疲れた。くたくたに疲弊した身体を引き摺って部屋に戻れば、五条から着信が来ている事に気付く。慌てて掛け直せば、案の定五条の声は不機嫌だった。
≪なんで電話でねーんだよ≫
『ごめん、朝からさっきまでずっと訓練だった。それより沖縄には無事着いたの?』
≪ふーん。…ん、今朝着いた。用も済んだしホントは今日東京戻るつもりだったけど、明日に変更になった≫
『そうなんだ。……ていうか悟、なんか疲れてる?』
声音だけで五条の体調がわかるようになってしまった自分に少し怖くなる。桃鉄の99年版を徹夜でやりこんだ時くらいには疲れているように思えた。五条が疲れているところなんて徹夜でゲームをやりこんだ時くらいしか見たことがないけれど、今回の任務はそれほど大変なものなのだろう。
≪…疲れてるって言ったら癒してくれる?≫
『えー、内容による』
≪じゃあなまえが寝るまで電話してていい?≫
意外な返答に、なまえは電話越しに驚いた。
五条の事だからまたくだらない事でも言ってくるのかと思いきや。基本的に自分勝手な彼が、”なまえが寝るまで”と言った。おそらく、今夜彼は寝ないつもりだろう。否、この様子だと昨晩も寝ていないだろうなとなまえは思う。普段は軽薄を絵に描いたような男だけれど、実のところ頭はかなりキレるし用心深い。大方、星漿体を守るため高専を離れてから術式を解いていないのだろう。