第7章 不協和音
『はぁ?なんで沖縄?』
≪んー色々あって≫
色々とあった経緯を話すのはどうやら面倒臭いらしい。ああ話す気ないなと悟ったなまえはそれ以上追及するのを止め、話を続けた。
『アンタさ、いくらその子が生意気だからって、失礼なこと言ってないでしょうね?女の子はただでさえ繊細なんだから、ちゃんと優しくしてあげなきゃ駄目だよ』
《へーへー、わかってるっつうの。どこに行ってもうるさいねオマエ》
いくら産まれた時から星奬体と同化する運命を背負っていたからと言って、その少女の思いは計り知れない。ひとりの少女に課せられた重い運命に、じんじんと心が痛む。それはきっと、任務を課せられた五条と夏油にとっては尚のことだろう。なまえはそんなことを思いながら、続けた。
『…でもさ、すごいじゃん。あの天元様が悟と傑を直々に指名したんだろ?』
≪らしーよ。夜蛾は荷が重いだのなんだの言ってたけど、俺達ならヨユーだわ今回も≫
『さすが最強コンビ。お土産よろしく』
≪お土産は俺の愛でいい?≫
『マジでいらねー』
≪今日傑にさー、一人称俺は辞めろって言われたんだけど。俺って変?≫
『あー、傑なら言いそう。天元様に会うかもしれないしね。せめて目上の人の前ではとか、年下にも怖がられにくいとか言われたんだろ』
≪セーカイ≫
『あはは、でもさ、俺じゃないなら”僕”とか?やべー悟が僕とか超うける』
けらけらと笑いながら、くだらない会話をして電話を切った。
久しぶりに寝転ぶベッドはきちんと洗濯されているのか、昔と同じ、柔軟剤と薬品の入り混じった匂いがした。懐かしさが余計に眠気を刺激したのか、なまえは携帯を手に持ったまま深い眠りについたのだった。