第6章 りんどうの唄
「オマエの分も、オマエの兄さんの分も最強背負ってやるよ。俺、負けた事ねぇし、今後誰にも負けないから。オマエも、オマエの兄さんの夢も、オマエの大切なもの、全部俺なら守れるよ。守るから。俺が叶える。……だからもう、最強になんて拘るの辞めろ。オマエはオマエで強いんだから。――”それでいいよ、なまえ。”」
『―――』
―――きっとそれは。ずっと、欲しかった言葉。
最強にこだわって、必死にもがいて。
始めは意地になってた。でも、共に過ごしていく中で気付いた。
いつも、本当は、君達に追いつきたかった。
追いつけるのかな。隣に並んでもいいのかな。
お兄ちゃんの夢を――守れるのかな。
そんな、呪いのように縺れた不安を、そっと解いてもらえたような気がした。
冷たい風が涙腺を刺激したのか、涙がツーと頬を伝う。
「やっぱ泣いてんじゃん」
『泣いてないっ……』
慌てて顔を逸らせば、五条のひんやりとした両手がなまえの両頬を覆った。ぐい、と両手で顔をホールドされて、宝石のような青い瞳に真っ直ぐ射抜かれる。
「泣き虫」
『…っ誰が泣かせたんだよ』
「罪な奴だね。なまえを泣かせるなんて」
『ばかっ……アンタだよっ…』
ぽろぽろとなまえの頬を伝う大粒の涙を、五条はそのまま親指で優しく拭ってから、ぐい、となまえの体を抱き寄せた。